【2027年1月施行】ベトナム最低賃金が改定|地域別金額・企業への影響を解説
ベトナム国家賃金審議会は2026年7月16日、2027年の地域別最低賃金を全国平均で7.8%引き上げる案を全会一致で採択しました。
政府が提案どおり承認した場合、新しい地域別最低賃金は2027年1月1日から適用される見通しです。
最低賃金の改定は、最低賃金付近の従業員だけでなく、給与テーブル、労働契約、残業代、社会保険料、求人条件などにも影響する可能性があります。
ベトナム2027年の地域別最低賃金について、国家賃金審議会が全国平均7.8%の引き上げ案を採択しました。企業担当者が確認すべき地域別金額、給与テーブル、労働契約、残業代、社会保険、求人条件への影響を整理します。
地域Ⅰで570万VND、地域Ⅱで508万VND、地域Ⅲで445万VND、地域Ⅳで404万VNDへ引き上げる案です。
ただし、2026年7月23日時点では政府による正式決定前です。企業は正式政令の公布を待つだけでなく、対象者の抽出、人件費試算、給与テーブル、労働契約、社会保険への影響を事前に確認しておく必要があります。
📖 目次
2027年から最低賃金を平均7.8%引き上げへ
ベトナム国家賃金審議会は2026年7月16日、2027年の地域別最低賃金について協議する会合を開催しました。
会合では、地域別最低賃金を全国平均で7.8%引き上げる案が全会一致で採択されました。
国家賃金審議会が採択した案は政府へ提出され、提案どおり承認された場合、2027年1月1日から適用される見通しです。
平均引き上げ率
全国平均7.8%
適用予定日
2027年1月1日
月額の引き上げ幅
31万~39万VND
現在の状況
政府への提案段階
労働者側は当初、8.0~8.5%程度の引き上げを求めていました。一方、企業側は人件費増加や経営状況への影響を懸念していました。
最終的には、労働者の生活水準と企業の賃金支払い能力の双方を考慮し、平均7.8%の引き上げ案で合意しています。
2026年7月23日時点では、最低賃金の引き上げは正式決定していません。
現在は国家賃金審議会が引き上げ案を採択し、政府へ提案した段階です。
正式な金額、時間額最低賃金、地域区分などは、今後公布される政令で確定します。
2026年と2027年の地域別最低賃金比較
2026年の地域別最低賃金は、政令293/2025/ND-CPに基づき、2026年1月1日から適用されています。
2027年の提案額と比較すると、次のようになります。
| 地域区分 | 2026年 | 2027年案 | 引き上げ額 | 上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| 地域Ⅰ | 5,310,000 VND | 5,700,000 VND | +390,000 VND | 約7.3% |
| 地域Ⅱ | 4,730,000 VND | 5,080,000 VND | +350,000 VND | 約7.4% |
| 地域Ⅲ | 4,140,000 VND | 4,450,000 VND | +310,000 VND | 約7.5% |
| 地域Ⅳ | 3,700,000 VND | 4,040,000 VND | +340,000 VND | 約9.2% |
※新たな金額は国家賃金審議会が採択した提案額です。
政府による正式承認と政令の公布後に確定します。
「平均7.8%」は各地域一律ではない
政府発表で使われている「平均7.8%」は、地域別最低賃金全体の平均的な引き上げ水準を示したものです。
各地域の新旧金額を単純に比較すると、地域Ⅰは約7.3%、地域Ⅱは約7.4%、地域Ⅲは約7.5%、地域Ⅳは約9.2%となります。
記事や社内資料での正しい表現
「各地域の最低賃金を一律7.8%引き上げ」ではなく、「地域別最低賃金を全国平均で7.8%引き上げる案」と記載するのが適切です。
全従業員を7.8%昇給させる制度ではない
今回の引き上げ案は、すべての従業員の給与を一律7.8%引き上げるよう企業に義務付けるものではありません。
企業に求められる基本的な対応は、対象となる労働者の仕事・職位に対する賃金が、適用地域の新しい最低賃金を下回らないようにすることです。
ただし、最低賃金付近の労働者だけを昇給すると、経験者や上位等級との給与差が小さくなる可能性があります。給与テーブル全体のバランスも確認する必要があります。
2026年の時間額最低賃金
2026年1月1日から適用されている時間額最低賃金は、次のとおりです。
| 地域区分 | 2026年の時間額最低賃金 |
|---|---|
| 地域Ⅰ | 25,500 VND/時間 |
| 地域Ⅱ | 22,700 VND/時間 |
| 地域Ⅲ | 20,000 VND/時間 |
| 地域Ⅳ | 17,800 VND/時間 |
時間額最低賃金は、政府が公布する正式な政令で確認する必要があります。
月額最低賃金の上昇率をそのまま掛けて推定すると、正式に定められる金額と異なる可能性があります。
時間額最低賃金は、正式政令の公布後に追記するのが安全です。
ベトナムの地域別最低賃金とは
ベトナムの地域別最低賃金とは、労働契約に基づいて働く労働者に対し、雇用主が支払う賃金の最低水準です。
地域ごとの生活水準、物価、経済発展、労働市場、労働生産性、企業の支払い能力などを考慮し、地域Ⅰから地域Ⅳまでの4段階で設定されています。
地域Ⅰ
主要都市や主要工業地域など、経済発展と都市化が進んでいる地域です。
地域Ⅱ
都市周辺部や、一定の経済発展が進んでいる地域です。
地域Ⅲ
地方都市や地方の主要な経済拠点などが含まれます。
地域Ⅳ
地域Ⅰから地域Ⅲに該当しないその他の地域です。
ハノイ市やホーチミン市などでも、市内のすべての行政区域が同じ地域区分になるとは限りません。
同じ市や省の中でも、事業所の所在地によって適用される地域区分が異なる場合があります。
企業が確認する地域
原則として、企業の登記上の本社所在地だけではなく、労働者が実際に勤務する事業所の所在地を基準に確認します。
本社、支店、工場、営業所などが異なる地域にある企業は、拠点ごとの地域区分を確認してください。
対象となる企業と労働者
地域別最低賃金は、ベトナム国内で労働契約に基づいて働く労働者と、その労働者を雇用する企業、組織、個人などに適用されます。
主な対象となる雇用主
- ベトナム資本の民間企業
- 日系企業を含む外資系企業
- 企業法に基づいて設立された企業
- 協同組合
- 労働者を雇用する機関・団体
- 労働者を雇用する世帯・個人
日系企業や外資系企業であっても、ベトナム国内で労働契約に基づいて従業員を雇用している場合は、原則として地域別最低賃金への対応が必要です。
基本給と最低賃金の関係
給与の総支給額が地域別最低賃金を上回っていても、それだけで最低賃金の条件を満たしているとは限りません。
ベトナム労働法第90条では、賃金を次の項目で構成すると定めています。
- 仕事または職位に対する賃金
- 賃金手当
- その他の追加支給
最低賃金との比較で重要になるのは、労働契約に定められた「仕事または職位に対する賃金」です。
これは、日本企業の給与制度で一般的に使われる「基本給」に近い概念です。
ただし、日本の給与制度上の基本給と、ベトナム法令上の仕事・職位に対する賃金が必ず完全に一致するとは限りません。
給与明細に記載された名称だけではなく、労働契約書や給与規程で各給与項目がどのように定義されているかを確認する必要があります。
最低賃金に関する法令上の根拠
労働法45/2019/QH14 第90条
労働法第90条では、賃金は「仕事・職位に対する賃金」「賃金手当」「その他の追加支給」で構成されると規定されています。
同条第2項では、仕事または職位に対する賃金は最低賃金を下回ってはならないと定められています。
政令293/2025/ND-CP 第4条
月給制の労働者について、月額最低賃金は賃金を合意・支給する際の最低基準とされています。
通常の労働時間を勤務し、合意した仕事内容を完了した労働者の仕事・職位に対する賃金は、月額最低賃金を下回ることができません。
政令293/2025/ND-CP 第5条
雇用主は、最低賃金の変更に合わせて、労働契約、労働協約、社内規程などを見直し、必要な調整を行う責任があります。
また、最低賃金の改定を理由に、残業代、深夜勤務手当、現物給付など、既存の合意や法令に基づく労働者の待遇を削減することはできません。
「グロス給与ではなく基本給で判定する」とだけ説明するより、「仕事または職位に対する賃金が最低賃金を下回ってはならない」と記載する方が法令上正確です。
手当を含めて最低賃金を満たせるのか
この点は、給与項目の名称だけで一律に判断しないよう注意が必要です。
地域Ⅰでの給与例
| 給与項目 | 金額 |
|---|---|
| 仕事・職位に対する賃金 | 5,300,000 VND |
| 住宅補助 | 1,000,000 VND |
| 食事補助 | 800,000 VND |
| 皆勤に応じた支給 | 500,000 VND |
| 総支給額 | 7,600,000 VND |
地域Ⅰの2027年最低賃金が提案どおり570万VNDとなった場合、この例の総支給額は570万VNDを上回っています。
しかし、仕事・職位に対する賃金は530万VNDであり、提案額の570万VNDを下回っています。
住宅補助や食事補助などが、仕事・職位に対する賃金とは別の手当や福利厚生として契約上区分されている場合、総支給額だけを理由に最低賃金を満たしているとは判断できません。
不足分との単純な相殺を避けるべき項目
- 残業代
- 深夜勤務の割増賃金
- 休日・祝日勤務の割増賃金
- 賞与
- 業績によって変動するインセンティブ
- 実費精算として支給する交通費や出張費
- 別項目として定められた福利厚生的な支給
ただし、名称に「手当」と付いている項目が、すべて自動的に最低賃金の判定対象外になるわけではありません。
固定的に支給されるものか、仕事や職位の条件に直接結び付いているか、労働契約上でどのように定義されているかを確認する必要があります。
最低賃金引き上げによる企業への影響
対象者の給与改定
仕事・職位に対する賃金が新しい最低賃金を下回る場合は、施行日までに引き上げる必要があります。
給与テーブルの見直し
最低等級だけを引き上げると、上位等級や経験者との給与差が小さくなる可能性があります。
残業代への影響
残業代などの計算基礎となる賃金を引き上げた場合、割増賃金も増加する可能性があります。
社会保険料への影響
労働契約上の賃金を変更すると、社会保険料の算定基礎が変わる場合があります。
労働契約の変更
契約書上の賃金額が最低賃金を下回る場合、付属合意書などによる変更を検討します。
採用条件の更新
求人票、オファーレター、採用予定者の給与条件にも新しい最低賃金を反映します。
2026年から2027年の企業対応比較
| 確認項目 | 2026年 | 2027年対応 |
|---|---|---|
| 地域Ⅰ | 5,310,000 VND | 5,700,000 VND案を基準に対象者を抽出 |
| 地域Ⅱ | 4,730,000 VND | 5,080,000 VND案を基準に対象者を抽出 |
| 地域Ⅲ | 4,140,000 VND | 4,450,000 VND案を基準に対象者を抽出 |
| 地域Ⅳ | 3,700,000 VND | 4,040,000 VND案を基準に対象者を抽出 |
| 給与テーブル | 2026年基準で運用 | 最低等級と上位等級の差を再確認 |
| 労働契約 | 現行賃金を記載 | 対象者は付属合意書などを準備 |
| 社会保険 | 現行の算定基礎で申告 | 賃金変更対象者の申告変更を確認 |
| 求人条件 | 2026年の最低賃金を基準 | 2027年1月以降の入社条件を更新 |
企業担当者チェックリスト
正式決定を待つだけでなく、提案額を使って対象者と人件費への影響を確認しておくことが重要です。
1.適用地域の確認
- 本社・支店・工場・営業所ごとの地域区分を確認した
- 行政区域の再編後の地域区分を確認した
- 複数地域に拠点がある場合、拠点ごとに確認した
- 正式政令の公布後に地域区分を再確認する予定を立てた
2.給与データの確認
- 全従業員の仕事・職位に対する賃金を一覧化した
- 提案額を下回る従業員を抽出した
- 月給制と時間給制の両方を確認した
- 総支給額だけで最低賃金を判定していない
3.人件費への影響
- 対象者1人あたりの月額増加額を計算した
- 部門・拠点別の人件費増加額を計算した
- 年間人件費を試算した
- 残業代や深夜勤務手当への影響を確認した
- 社会保険料の会社負担分への影響を確認した
4.給与テーブル・社内規程
- 最低等級の給与が新しい最低賃金以上となるか確認した
- 等級間の給与差が不自然に小さくならないか確認した
- 給与テーブルの改定が必要か確認した
- 賃金規程、就業規則、労働協約との整合性を確認した
5.労働契約書
- 労働契約書に記載された賃金額を確認した
- 契約変更が必要な従業員を特定した
- 付属合意書などの準備を進めた
- 仕事・職位に対する賃金と手当を明確に区分した
6.給与計算・社会保険
- 給与計算システムの変更が必要か確認した
- 残業・深夜・休日勤務の計算設定を確認した
- 社会保険料の算定基礎が変わる対象者を確認した
- 社会保険の変更申告が必要か確認した
7.求人・従業員への説明
- 求人サイトに掲載中の給与額を確認した
- オファーレターや採用通知書を確認した
- 2027年1月以降の入社予定者を確認した
- 従業員向けの説明文を準備した
- 全従業員が一律7.8%昇給する制度ではないことを説明できる
企業の対応スケジュール
| 時期 | 主な対応内容 |
|---|---|
| 2026年7~9月 | 適用地域、対象者、給与項目を確認し、提案額で概算コストを試算する |
| 正式政令の公布後 | 月額・時間額最低賃金、地域区分、施行日を確認する |
| 2026年10~11月 | 給与テーブル、労働契約、社内規程、求人条件を修正する |
| 2026年12月 | 従業員への通知、契約変更、給与システムの設定、テスト計算を行う |
| 2027年1月 | 新しい最低賃金を適用し、給与計算と社会保険申告を確認する |
正式政令の公布時期によっては、準備期間が短くなる可能性があります。
政府の正式決定後に調査を始めるのではなく、提案額を使って対象者と概算コストを把握しておくと、施行前の対応がスムーズです。
よくある質問
2027年の最低賃金は正式決定していますか?
2026年7月23日時点では正式決定していません。国家賃金審議会が引き上げ案を採択し、政府へ提案した段階です。
いつから適用される予定ですか?
政府が提案どおり承認した場合、2027年1月1日から適用される見通しです。
すべての従業員を7.8%昇給させる必要がありますか?
全従業員を一律7.8%昇給させる義務ではありません。仕事・職位に対する賃金が新しい最低賃金を下回る労働者がいるかを確認します。
グロス給与が最低賃金以上なら問題ありませんか?
総支給額だけでは判断できません。労働契約上の仕事・職位に対する賃金が、適用地域の最低賃金を下回っていないかを確認する必要があります。
住宅手当や食事手当を含めて判定できますか?
手当の名称だけでは判断できません。労働契約上の性質や支給条件を確認する必要があります。
日系企業や外資系企業も対象ですか?
ベトナム国内で労働契約に基づいて従業員を雇用している場合、原則として対象です。
パートタイム労働者にも適用されますか?
時間単位で賃金を支払う場合は、時間額最低賃金を確認する必要があります。
最低賃金が上がると社会保険料も上がりますか?
必ず一律に上がるわけではありません。ただし、保険料の算定基礎に含まれる労働契約上の賃金を変更した場合は、負担額が増える可能性があります。
まとめ
ベトナム国家賃金審議会は、2027年の地域別最低賃金を全国平均で7.8%引き上げる案を採択しました。
政府が提案どおり承認した場合、2027年1月1日から次の月額最低賃金が適用される見通しです。
- 地域Ⅰ:5,700,000 VND
- 地域Ⅱ:5,080,000 VND
- 地域Ⅲ:4,450,000 VND
- 地域Ⅳ:4,040,000 VND
ただし、2026年7月23日時点では正式な政令は公布されていません。
企業は政府の正式発表を待つだけでなく、適用地域、対象従業員、労働契約上の賃金構成、人件費、残業代、社会保険料、求人条件への影響を事前に確認しておくことが重要です。
特に、手当や残業代を含む総支給額だけで判断せず、労働契約上の仕事または職位に対する賃金が、新しい最低賃金を下回っていないかを確認しましょう。
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※本記事は2026年7月23日時点の公表情報をもとに作成しています。2027年の地域別最低賃金は政府による正式承認前であり、今後、金額、時間額最低賃金、地域区分、施行条件などが変更される可能性があります。本記事は一般的な制度情報を整理したものであり、個別の労働契約や給与制度に関する法的助言ではありません。実際の対応については、ベトナムの労務・法務専門家へご確認ください。