ベトナム女性の就業率はASEAN2位、それでも若年ニートが増える理由

ベトナムビジネス|InfoBank寄稿
ベトナムでは女性の労働参加率がASEAN第2位と高い一方で、15~24歳の若年女性ニート率は男性を上回っています。高い女性就業率の裏側で、家事・育児負担や地域格差、技能と雇用条件のミスマッチがどのように就業の入り口を狭めているのかを、統計データから読み解きます。
👩 女性就業率
📊 若年ニート
🌏 ASEAN
🏢 人材採用
👶 家事・育児
📈 雇用ミスマッチ
📖 目次
ベトナムの若年層ニートは140万人も存在
ベトナム統計局によると、2026年4~6月期に「ニート」だった15~24歳の若年層は約140万人となり、若年人口の10.0%を占めた。「ニート」の対象となるのは、就業も就学も、職業訓練もいずれにも取り組んでいない15~24歳の人々である。
1~3月期には約160万人、若年人口の11.4%だった状態からは減少している。ただし男女別に若年ニートが占める割合を見ると、女性は11.6%、男性は8.5%であった。1~3月期の2.8ポイントと比べると、その差は3.1ポイントにわずかながら開いている。
ベトナムでは女性の就業指標が国際的に高い水準にあるにもかかわらず、キャリアの入り口には依然、壁が残っている。

若年層の1割が就職の入り口にすら立てていない

ベトナムでは、就業や就学、職業訓練のいずれも取り組んでいない状態を「三つのない(ba không)」と呼ぶ。国際的にはニートと呼ばれる人々で、失業者とは異なる扱いをしている。失業者は、現在働いておらず、かつ仕事を探している人に限られる。一方、ニートの場合は求職していない若者も含まれる。4~6月期に、人口に占めるニートの割合を詳しく見ると、農村部は11.5%、都市部は7.8%となっている。農村部の方が3.7ポイント高い。
直前の1~3月期は、ニートの増加が際立っていた。1~3月期のニートの人数はおよそ160万人。前年の同期比でおよそ21万人増えている。男女別に見ると、1~3月期は女性が12.8%、男性が10.0%だった。農村部では13.0%、都市部は8.9%と、地域差も4~6月期より開いていた。
同年の1~3月期における若年失業率は8.86%で、全体の失業率2.21%と比べると、およそ4倍高い水準である。職を探し求める場面において、若年層が不利な立場に置かれる構図が続いている。
女性の労働参加率はASEANで2位
世界銀行のデータベースによると、2025年のベトナムにおける女性労働参加率は68.6%だった。女性労働参加率は、15歳以上の女性人口に占める労働力の割合を指し、国際労働機関(ILO)により推計されている。
ベトナムは女性労働参加率の高い国の一つだ。ASEANではカンボジアの77.4%に次ぐ2位で、シンガポールの63.6%を上回る。日本は55.9%となっており、13ポイント近くの差が開いている(世界銀行統計)。

企業経営の場でも女性の占める比率は高い。グラントソントン・ベトナムが2026年に公表した中堅企業調査では、上級管理職に占める女性の割合は38.6%となった。前年の37.4%から1.2ポイント上昇している。世界平均で見ると、女性の占める比率は34.0%から32.9%へ低下、アジア太平洋地域に限ると31.8%だった。ベトナムは2019年以降、世界・アジア太平洋地域の平均をともに上回っている。

同じ調査にもとづくと、ベトナムでは、上級管理職が全員男性である企業は確認されなかった。世界平均で見ると5.7%が該当しており、ベトナムにおける女性の社会進出を示すデータの一つだ。個別の企業で見ると、流通大手DKSHのベトナム法人が、従業員の55%、管理職の60%をそれぞれ女性が占めると公表している。
職位が上がるほど女性比率が下がる一般とは逆の傾向が見られる。同社はこの実績により2026年のTop 50 Corporate Sustainability Awardsでジェンダー平等に関する表彰を受けた。
地域で開く若年女性のニート率格差
若年ニートや女性の社会進出に関する状況は、地域ごとに大きく異なる。ベトナム統計局の労働力調査報告(2023年)で地域ごとに、若年人口に対する若年ニートの占める割合を見ると、北部山岳地域は17.7%、メコンデルタは15.7%などで高い比率を記録している。一方で、最も低いのは紅河デルタの8.3%だった。

男女差も、地域によって大きく開く。同じ2023年の調査で、メコンデルタの女性のニート率は19.2%、男性のニート率は12.4%と、差は6.8ポイントに達している。全国で見た男女のニート率の差が3.1ポイントだったことから、メコンデルタ地域では、女性が就業していない状況がより顕著に表れている(ベトナム統計局)。
男性より女性の方が若年ニートになりやすいのは、ベトナムだけの現象ではない。ILOによると、アジア太平洋地域では若年ニートの3分の2以上が女性である。
ILOベトナム事務所のパク・シンウォン所長は、「家事や育児を女性が担うことを期待する社会的な慣習が学校から仕事への移行を妨げる。結果として若年女性は求職そのものをやめる『非活動型ニート(inactive NEET)』になりやすい」と指摘する。
家事・育児の負担が阻む女性の就業
女性の方が若年ニートに陥りやすい理由の一つが、賃金の支払われない家事や育児、介護といった無償ケア労働の負担である。ILOが2021年に公表した分析によると、ベトナムの女性は掃除や洗濯、料理、家族の世話や育児に週20.2時間を費やしている。一方で、男性は週10.7時間であり、女性の方がおよそ1.9倍長い。
ベトナム政府は2021年の決議で、女性と男性の家事時間の比率を、2025年に1.7倍、2030年に1.4倍まで縮める目標を掲げている。
ただし、現地メディアVietnam Investment Review によれば、無償ケア労働は、労働として制度上位置づけられておらず、GDPや経済成長にも含まれない。ケア負担のために、女性がパートタイム就労や自宅近くの職場を選び、昇進を辞退せざるを得ない場合もあると指摘されている。
近年は家事代行サービスの利用も広がっており、家事・育児負担の軽減を支える社会サービスとして注目されています。ハノイで利用できるサービスについては、ハノイのおすすめ家事代行サービスで詳しく紹介しています。
資格と実務のズレが招く若年層の採用難
若年層全体に共通する課題もある。資格を持ちながらも、実践的な技能が足りていない卒業生が少なくない点だ。教育や職業訓練に関する仕組みが労働市場の変化に追いついておらず、実務経験の機会も限られるためである。
2026年1~3月期には就業者の62.2%が非正規雇用に従事している。ILOは「仕事の数ではなく働きがいのある人間らしい仕事の不足こそが課題だ」と指摘する。この構図は日系企業の採用にも表れている。ジェトロの2025年度調査では、在ベトナム日系企業の48.2%が直近2年間で「採用が困難になっている」と回答し、ASEAN平均の36.8%を上回った(出所:ジェトロ「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」)。140万人が「若年ニート」として労働の機会が得られない一方で、日系企業は人を十分に採れていない。
現地採用の難しさは、人数の問題ではなく、労働者の技能教育や環境と、雇用条件が噛み合っていない(ミスマッチしている)ことの表れである。若年女性が家族ケアの負担によって入り口に立てない分だけ、企業から見た候補者も少なくなってしまう。日系企業が地元の学校や大学と連携して講座やインターンシップに取り組んでいるのは、この隔たりを埋める価値のある試みと考えられる(出所:ジェトロ「深刻化する人材確保の課題、多様な人事施策の検討がカギ(ベトナム)」)。
📖 本記事の寄稿
本記事はベトナム経済メディア「InfoBank」より寄稿いただいた記事です。
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