ベトナムの試用期間は給与85%でOK?知らないと危ない期間・契約・社会保険ルール

⚠️ ベトナムの試用期間、給与85%で本当に大丈夫ですか?
ベトナムで従業員を採用する際、「試用期間中は給与85%でよい」と理解している企業は少なくありません。
しかし、試用期間の上限、契約形式、社会保険の扱い、試用終了後の手続きまで確認しないと、日系企業にとって思わぬ労務リスクになることがあります。
💰 給与85%
📝 試用契約
🏢 日系企業向け
🧾 社会保険
ベトナムで人材を採用する際、多くの企業が試用期間を設定します。
試用期間は、企業が候補者のスキルや勤務態度を確認するための重要な期間です。一方で、労働法上は期間や給与、契約形式に明確なルールがあります。
特に注意したいのが、「給与85%」という数字だけを見て運用してしまうことです。試用期間中の給与は職務に対する正式給与の85%以上とされていますが、すべてのケースで「85%にすれば問題ない」という意味ではありません。
この記事では、ベトナムの試用期間について、期間、給与、契約、社会保険、試用終了後の対応、日系企業で起こりやすいミスまで実務目線で解説します。
目次
- 結論|給与85%だけ見て運用すると危ない
- ベトナムの試用期間ルールとは
- 試用期間は最大何日?180日・60日・30日・6営業日の違い
- 試用期間中の給与85%ルール
- 正式給与10,000,000VNDなら8,500,000VNDで本当にOK?
- 試用契約と労働契約は何が違う?
- 社会保険は払わなくていい?契約形式で変わる注意点
- 1か月未満の労働契約に試用期間は設定できる?
- 試用期間を2回設定できる?
- 試用期間中に即日退職・不採用にできる?
- 試用終了後に会社がやるべきこと
- 日系企業でよくある危ない運用
- 給与計算シミュレーターで人件費を確認
- 採用・給与計算・労務管理で困っている企業様へ
- よくある質問
- まとめ
結論|給与85%だけ見て運用すると危ない
ベトナムの試用期間中の給与は、労働法上、正式給与の85%以上とされています。
そのため、「正式給与の85%を支払えばよい」と考えること自体は間違いではありません。
しかし、実務上は次の点まで確認する必要があります。
試用期間で確認すべきポイント
- 職種に応じた試用期間の上限を超えていないか
- 同じ仕事に対して試用期間を2回設定していないか
- 1か月未満の労働契約に試用期間を設定していないか
- 試用契約なのか、労働契約の中の試用条項なのか
- 社会保険・健康保険の加入対象にならないか
- 試用終了後に労働契約へ適切に移行しているか
💡 この記事のポイント
「試用期間=給与85%で社会保険なし」と単純に考えるのは危険です。特に2025年7月以降は社会保険制度の改正もあり、契約形式によって扱いを慎重に確認する必要があります。
ベトナムの試用期間ルールとは
ベトナムでは、企業と従業員が合意することで試用期間を設定できます。
試用期間は、業務内容や職位の複雑さに応じて設定されます。ただし、企業が自由に何か月でも設定できるわけではなく、職種ごとに上限があります。
また、試用期間については、独立した試用契約として締結する方法と、労働契約の中に試用条項として入れる方法があります。
試用期間でよく確認される項目
- 試用期間の長さ
- 試用期間中の給与
- 試用期間中の勤務条件
- 試用終了後の採用・不採用判断
- 試用契約か、労働契約内の試用条項か
- 社会保険・健康保険の加入対象か
試用期間は最大何日?180日・60日・30日・6営業日の違い
ベトナムの試用期間は、職種や職位によって上限が異なります。
| 試用期間の上限 | 対象となる主な職種・職位 | 注意点 |
|---|---|---|
| 180日以内 | 企業管理者などの一部の管理職 | 一般社員に安易に適用しない |
| 60日以内 | 短期大学以上の専門性を要する職位 | 多くのオフィス職・専門職で確認対象 |
| 30日以内 | 中級職業資格、技術者、熟練労働者など | 現場職・技術職で確認が必要 |
| 6営業日以内 | その他の仕事 | 単純作業などで長期設定しない |
⚠️ 長く設定すればよいわけではない
職位や業務内容に合わない長い試用期間を設定すると、労務上の問題になる可能性があります。日系企業では、すべての職種に一律で2か月の試用期間を設定しているケースもありますが、職種ごとの上限確認が必要です。
試用期間中の給与85%ルール
ベトナムでは、試用期間中の給与は企業と従業員の合意により決められます。
ただし、試用期間中の給与は、その職務に対する正式給与の85%を下回ってはいけません。
基本的な考え方
- 試用期間中の給与は当事者間で合意する
- ただし正式給与の85%以上である必要がある
- 85%未満にすることは避ける
- 手当や福利厚生の扱いも事前に明確にする
ここで重要なのは、85%は「上限」ではなく「下限」だという点です。
企業によっては、試用期間中も正式給与と同額を支払うケースもあります。
正式給与10,000,000VNDなら8,500,000VNDで本当にOK?
たとえば、正式採用後の給与が10,000,000VNDの場合、試用期間中の給与は最低でも8,500,000VND以上にする必要があります。
| 正式給与 | 85% | 試用期間中の最低給与目安 |
|---|---|---|
| 10,000,000VND | 8,500,000VND | 8,500,000VND以上 |
| 20,000,000VND | 17,000,000VND | 17,000,000VND以上 |
| 30,000,000VND | 25,500,000VND | 25,500,000VND以上 |
💡 ただし、給与だけで判断しない
給与85%を満たしていても、試用期間の上限、契約形式、社会保険の扱い、試用終了後の労働契約手続きに問題があると、労務リスクになります。
試用契約と労働契約は何が違う?
ベトナムでは、試用期間を設定する方法として、大きく次の2つがあります。
| 形式 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 試用契約 | 試用期間のみを対象とする契約 | 試用終了後に正式な労働契約を締結する運用が必要 |
| 労働契約内の試用条項 | 労働契約の中に試用期間を定める形式 | 社会保険・健康保険の加入対象を慎重に確認 |
どちらの形式を使うかによって、試用終了後の手続きや社会保険の扱いが変わる可能性があります。
そのため、日系企業では、採用時の契約書テンプレートをそのまま使い続けるのではなく、最新の法令・実務運用に合わせて確認することが重要です。
1か月未満の労働契約に試用期間は設定できる?
ベトナムでは、契約期間が1か月未満の労働契約については、試用期間を設定できないとされています。
短期雇用やアルバイト的な運用をする場合でも、試用期間を設定できるかどうかは契約期間と業務内容を確認する必要があります。
短期契約での注意点
短期契約だからといって、安易に試用期間を設定したり、正式契約を先延ばしにしたりする運用は避けましょう。
試用期間を2回設定できる?
ベトナムでは、同じ仕事に対して試用期間を複数回設定することはできません。
たとえば、最初に1か月の試用期間を設定し、その後さらに同じ職務で1か月延長するような運用は注意が必要です。
危ない運用例
- 試用期間終了後に、同じ職務で再度試用契約を結ぶ
- 60日を超えても正式な労働契約へ移行しない
- 「評価がまだ終わっていない」として試用期間を延長する
- 職務名だけを変えて実質的に同じ仕事で再試用する
試用期間中に即日退職・不採用にできる?
試用期間中は、双方が試用契約を終了できる余地があります。
ただし、実務上は、契約書に記載された条件、社内規程、評価記録、終了通知の方法などを確認した上で対応することが重要です。
企業側の注意点
試用期間中だからといって、評価理由や記録を残さずに不採用判断をすると、後からトラブルになる可能性があります。評価基準、勤務態度、業務遂行状況などを記録しておくと安心です。
試用終了後に会社がやるべきこと
試用期間が終了したら、企業は試用結果を従業員へ通知し、採用する場合は労働契約の継続・締結へ進む必要があります。
試用終了後の確認リスト
- 試用評価を実施する
- 採用・不採用を明確に伝える
- 採用する場合は労働契約を整備する
- 給与額・手当・勤務条件を確認する
- 社会保険・健康保険の加入手続きを確認する
- 給与計算システム・勤怠管理へ反映する
試用期間終了後に正式契約へ移行したにもかかわらず、給与や社会保険の設定が試用期間のままになっているケースもあります。
給与計算担当者、人事担当者、会計事務所との連携が重要です。
日系企業でよくある危ない運用
ベトナムで採用活動を行う日系企業では、日本の感覚で試用期間を運用してしまうケースがあります。
よくあるミス
- 全職種に一律2か月の試用期間を設定している
- 正式給与の85%未満で試用給与を設定している
- 試用期間を延長している
- 試用終了後も正式な労働契約を整備していない
- 社会保険の加入タイミングを確認していない
- 試用期間中の評価記録を残していない
- 試用契約と労働契約の違いを整理していない
💡 採用と労務はセットで考える
採用時のオファー条件、試用期間、給与、社会保険、労働契約はすべてつながっています。採用担当者だけで判断せず、人事・労務・給与計算担当者が連携して確認することが大切です。
給与計算シミュレーターで人件費を確認
試用期間中の給与を設定する際は、従業員の手取り額だけでなく、会社負担の社会保険や総人件費も確認しておくと安心です。
Mintoku Work Payrollでは、ベトナムの給与計算の概算を確認できるシミュレーターを公開しています。
Mintoku Work Payrollで確認できること
- Gross給与から手取り額を試算
- 社会保険・健康保険・失業保険の概算
- 個人所得税(PIT)の概算
- 会社負担分を含めた総コストの目安
- 外国人・ベトナム人の給与計算確認
採用・給与計算・労務管理で困っている企業様へ
ベトナムでの採用では、候補者を見つけるだけでなく、試用期間、給与条件、労働契約、社会保険、給与計算まで一貫して管理する必要があります。
Vietnam CAMCOMでは、ベトナムで事業を行う日系企業向けに、人材採用支援、給与計算BPO、バックオフィス支援、ベトナム進出支援を行っています。
人材採用支援
日本人・ベトナム人の採用、候補者紹介、採用活動のサポートを行います。
給与計算BPO
給与計算、社会保険、個人所得税、給与明細作成などの業務をサポートします。
ベトナム進出支援
進出初期の体制づくり、人材・BPO・バックオフィス運用を支援します。
よくある質問
Q. ベトナムの試用期間中の給与は85%でよいですか?
正式給与の85%以上であれば、最低基準は満たすと考えられます。ただし、試用期間の上限、契約形式、社会保険の扱いも確認する必要があります。
Q. 試用期間は何か月まで設定できますか?
職種によって異なります。企業管理者などは最大180日、短期大学以上の専門性を要する職位は最大60日、技術者などは最大30日、その他の仕事は最大6営業日が目安です。
Q. 試用期間を延長できますか?
同じ仕事に対して試用期間を2回設定することはできません。延長運用は労務リスクになる可能性があります。
Q. 試用期間中は社会保険に加入しなくてよいですか?
「試用期間だから一律に加入不要」とは判断できません。独立した試用契約か、試用内容を含む労働契約か、契約期間や従業員区分が社会保険法上の強制加入対象に該当するかを確認してください。
Q. 外国人社員にも同じルールが適用されますか?
ベトナムで就労する外国人についても、労働契約、ワークパーミット、社会保険、税務の確認が必要です。日本人採用の場合は、試用期間だけでなくVISA・ワークパーミット・TRCもあわせて確認しましょう。
まとめ|ベトナムの試用期間は「85%」だけで判断しない
ベトナムの試用期間中の給与は、正式給与の85%以上とされています。しかし、実務では給与だけでなく、試用期間の上限、契約形式、社会保険、試用終了後の労働契約への移行まで確認する必要があります。
特に日系企業では、日本の感覚で試用期間を一律に設定したり、試用期間を延長したり、社会保険の加入タイミングを確認しないまま運用したりするケースがあります。
ベトナムで採用を行う場合は、採用条件、試用契約、労働契約、給与計算、社会保険をセットで確認し、必要に応じて専門家やBPOサービスを活用すると安心です。
この記事のポイント
- 試用期間中の給与は正式給与の85%以上が必要
- 試用期間の上限は職種により異なる
- 同じ仕事に対して試用期間を2回設定できない
- 1か月未満の労働契約では試用期間を設定できない
- 社会保険は契約形式によって扱いを慎重に確認する
- 試用終了後は正式な労働契約・給与設定・社会保険手続きを確認する
参考情報
本記事では、ベトナム政府・国家法令データベースなどの公的情報を優先して確認しています。
可能な限り正確かつ最新の情報を掲載するよう努めていますが、ベトナムの法令や制度は、政令・省令・通達・行政運用などにより変更される場合があり、個別の契約内容や企業・従業員の状況によって判断が異なることがあります。
実際の労働契約、試用期間の設定、社会保険手続きなどを行う際は、必要に応じて管轄当局やベトナム法務・労務に詳しい専門家へご確認ください。
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ベトナム国家法令データベース(Cơ sở dữ liệu quốc gia về văn bản pháp luật)
労働法45/2019/QH14を含むベトナム法令の公式確認先。試用に関する規定は主に第24条〜第27条を確認。
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ベトナム政府公式法令ポータル|社会保険法41/2024/QH15
2024年6月29日公布、2025年7月1日施行。強制社会保険の対象確認に使用。
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ベトナム政府公式ポータル|社会保険法41/2024/QH15全文
ベトナム政府公式サイトに掲載された社会保険法全文。
⚠️ 法令情報について
ベトナムの労働・社会保険制度は、法律だけでなく政令、省令、施行ガイダンスなどによって実務運用が補足・変更される場合があります。実際の契約や社会保険手続きを行う際は、公布時点と施行日、改正・失効状況を含めて最新の公的情報をご確認ください。
社会保険は払わなくていい?契約形式で変わる注意点
試用期間中の社会保険については、実務上とても注意が必要です。
社会保険の加入要否は、「試用期間中かどうか」という名称だけで決めるのではなく、実際に締結している契約が社会保険法上の強制加入対象に該当するかを確認する必要があります。
特に、独立した試用契約なのか、試用内容を含む労働契約なのか、契約期間や従業員区分がどうなっているかを整理した上で判断することが重要です。
整理して考えたいポイント
⚠️ 「試用期間だから社会保険なし」と断定しない
試用契約だけを前提に「試用期間中は社会保険不要」と考えるケースがありますが、労働契約の中に試用条項を入れている場合や、契約期間・加入対象に該当する場合は、社会保険・健康保険の扱いを慎重に確認する必要があります。
社会保険法41/2024/QH15は2025年7月1日に施行されました。加入対象を確認する際は、同法の強制社会保険対象者に関する規定と、実際の契約内容を照合する必要があります。
そのため、給与計算や社会保険の運用では、社内の契約書、雇用期間、従業員区分を整理し、必要に応じてベトナムの管轄当局や公的な法令データベースで最新の規定を確認してください。