ベトナムの雇用契約書が2026年7月からオンライン化?電子労働契約の新ルールを解説
ベトナムでは、2026年7月1日から電子労働契約に関する新しい運用ルールが本格化します。
ただし、注意したいのは、「すべての雇用契約書が紙からオンラインに強制移行する」という意味ではないという点です。
今回のポイントは、電子労働契約を締結した場合、その契約を所定の電子労働契約プラットフォームへ送信し、契約ごとに識別IDを付与して管理する仕組みが具体化されたことです。
本記事では、ベトナム政府・内務省の公的情報をもとに、電子労働契約の新ルール、紙の契約書との関係、日系企業が確認すべき実務対応について解説します。
目次
2026年7月1日から何が変わるのか
ベトナム内務省の解説によると、2026年7月1日以降、電子労働契約を締結した場合、その契約は電子労働契約プラットフォームへ送信され、規定に基づいてIDが付与される仕組みになります。
ID付与は、契約データが有効に受け付けられた後、システム上で自動的に行われるとされています。
重要ポイント
2026年7月1日から変わるのは、電子労働契約を利用する場合の管理方法です。
紙の雇用契約書が一律で禁止されるという内容ではありません。
電子労働契約とは何か
電子労働契約とは、企業と労働者が電子的な方法で締結する労働契約のことです。
従来の紙の雇用契約書では、契約書を印刷し、会社代表者と労働者が署名・押印し、双方が保管する形が一般的でした。
一方、電子労働契約では、本人確認、電子署名、タイムスタンプ、データ保存などを通じて、契約の作成・締結・管理をオンライン上で行うことが想定されています。
| 項目 | 紙の雇用契約書 | 電子労働契約 |
|---|---|---|
| 締結方法 | 紙に署名・押印 | 電子署名などで締結 |
| 保管方法 | 紙で保管 | 電子データで保管 |
| 管理 | 社内ファイル・人事書類で管理 | 電子労働契約プラットフォームと連携 |
| 確認性 | 原本確認が必要 | IDや電子データにより確認しやすい |
紙の雇用契約書は廃止されるのか
企業担当者が最も気になるのは、「紙の雇用契約書は使えなくなるのか」という点だと思います。
現時点で確認できる政府・内務省の情報を見る限り、2026年7月1日から紙の雇用契約書が全面的に廃止される、という内容ではありません。
今回の制度は、電子労働契約を締結する場合の条件や管理方法を整備するものです。
そのため、記事や社内説明では、「雇用契約書が完全オンライン化される」という表現よりも、「電子労働契約の運用ルールが本格化する」という表現の方が正確です。
誤解しやすい表現
「2026年7月から紙の雇用契約書が禁止」
より正確な表現
「2026年7月から電子労働契約の管理・ID付与ルールが本格化」
政令337/2025/NĐ-CPのポイント
電子労働契約の基本的な枠組みは、ベトナム政府の政令337/2025/NĐ-CPで定められています。
この政令では、電子労働契約の締結、管理、本人確認、電子署名、データメッセージの信頼性など、電子契約として有効に運用するための基本ルールが示されています。
企業側としては、単にPDFをメールで送り、労働者に返信してもらえばよい、という単純な話ではありません。
電子労働契約として適切に運用するためには、本人確認、署名、保存、改ざん防止、データ管理などを確認する必要があります。
通達08/2026/TT-BNVで具体化された内容
2026年5月15日に公布された通達08/2026/TT-BNVは、政令337/2025/NĐ-CPの一部内容について、より具体的な実施方法を定めるものです。
この通達は2026年7月1日から有効となります。
内務省の解説では、2026年7月1日以降、締結された電子労働契約は電子労働契約プラットフォームへ送信され、規定に基づいてIDが付与されると説明されています。
また、本人確認、電子署名、タイムスタンプ、データメッセージの証明などの条件を満たさない場合、システム上で受け付けが拒否され、その理由が通知される仕組みとされています。
企業が確認すべき実務対応
日系企業がすぐに確認すべきポイントは、以下の通りです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 現在の契約方法 | 紙契約か、電子契約を一部利用しているかを確認 |
| 電子署名の有無 | 利用している電子署名が制度上の要件に合うか確認 |
| 本人確認 | 労働者本人による契約締結であることを確認できる仕組みがあるか |
| 契約データの保存 | 契約データを安全に保管・検索できるか |
| 契約更新管理 | 有期契約の更新期限、試用期間、契約変更履歴を管理できているか |
| 社内フロー | 人事、総務、会計、給与計算担当者の役割分担が明確か |
特に、雇用契約書は給与計算、社会保険、個人所得税、退職手続き、労務監査とも関係します。
電子化を進める場合は、契約書だけでなく、労務データ全体の管理方法を見直すことが重要です。
日系企業への影響
ベトナムの日系企業では、日本人管理者、ベトナム人正社員、試用期間中の社員、有期契約社員、外国人労働者など、複数の雇用形態が混在しているケースがあります。
そのため、電子労働契約の導入を検討する場合、次のような点に注意が必要です。
- 雇用契約書のひな形が最新の法令に合っているか
- 試用期間契約と正式雇用契約の管理が分かれているか
- 契約更新日を管理できているか
- 外国人労働者のワークパーミット・TRC情報と契約内容が一致しているか
- 給与、手当、社会保険、PITの計算根拠と契約内容にズレがないか
電子労働契約は便利な仕組みですが、導入すれば自動的に労務リスクがなくなるわけではありません。
むしろ、契約内容、給与計算、社会保険、個人所得税の整合性がこれまで以上に見られやすくなる可能性があります。
よくある質問
Q1. 2026年7月1日から紙の雇用契約書は使えなくなりますか?
現時点で確認できる政府・内務省の情報では、紙の雇用契約書が一律で禁止されるという内容ではありません。
2026年7月1日からは、電子労働契約を締結した場合の管理・ID付与の仕組みが具体化されます。
Q2. PDFに署名してメールで送れば電子労働契約になりますか?
単にPDFを送受信するだけでは、制度上求められる電子労働契約として十分とは限りません。
本人確認、電子署名、タイムスタンプ、データの信頼性などを確認する必要があります。
Q3. 日系企業はすぐに電子契約へ切り替える必要がありますか?
すぐに全面移行するかどうかは、企業の運用状況によります。
ただし、今後の労務管理の電子化を見据え、契約書ひな形、契約更新管理、給与計算・社会保険との整合性は早めに確認しておくべきです。
Q4. 外国人労働者の契約にも関係しますか?
外国人労働者についても、雇用契約、ワークパーミット、TRC、給与、個人所得税の情報が整合していることが重要です。
電子契約を導入する場合は、外国人労働者の労務書類全体との整合性を確認する必要があります。
まとめ
ベトナムでは、2026年7月1日から電子労働契約の管理・ID付与に関する運用ルールが本格化します。
ただし、これは紙の雇用契約書が一律で廃止されるという意味ではありません。
正確には、電子労働契約を締結する場合の制度整備が進み、電子労働契約プラットフォームを通じた管理が始まるということです。
日系企業にとっては、電子契約そのものだけでなく、雇用契約書、試用期間、契約更新、給与計算、社会保険、個人所得税の管理体制を見直す良いタイミングといえます。
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参考情報
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ベトナム政府:Nghị định 337/2025/NĐ-CP về hợp đồng lao động điện tử
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ベトナム政府:Thông tư 08/2026/TT-BNV
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ベトナム内務省:Từ ngày 01/7/2026: Hợp đồng lao động điện tử được quản lý bằng mã định danh
本記事では、ベトナム政府・内務省などの公的情報を優先して確認しています。制度の解釈や個別企業での運用については、最新の公的情報を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。